月額1,000円見放題サービス、9/26の新着ラインナップを見たら最上段に『銀装騎攻オーディアン』『超神姫ダンガイザー3』『太陽の勇者ファイバード』が並んでいて、興味をひきました。
いずれも監督・アニメーターの大張正己が深く関わった元気いっぱいの作品です。
(C)プラム/オーディアン製作委員会
1980年代はガンダムのヒットによる活況で、ロボットアニメが量産された時代です。その当時業界にはいってきた新人クリエイターたちにも、いろんな試みができる大きなチャンスが与えられたのです。アニメーターに関する状況を引っぱったのは、35回、36回で取りあげた原画マン金田伊功です。そのメカやエフェクトのエネルギッシュな作画は、「金田フォロワー」のアニメーターたちを数多く生みました。
そうやって戦闘シーンなどにこもったパワーは80年代アニメに燃え上がるような雰囲気を与えて、受け手の側も熱く刺激していました。大張正己はそんな双方向に熱かった時代の中で出てきたさらに若手と言える世代で、80年代中盤以降に『超獣機神ダンクーガ』のロボット作画で注目され、頭角を現したアニメーターです。
肩を大きく張り出して遠近感を強調し、指をねじ曲げるように広げた独特のポーズ、タメとツメと時間の認識を誇張したダイナミックなアクション、複雑に描きこまれたディテールとうねるような陰影、メカなのにどこか人間味を感じさせる表情や生物的な関節の曲がり方などの作画手法は、後世に大きな影響を与えています。
それはもちろん金田伊功作画へのリスペクトがベースなのですが、明らかに一歩踏み出しているイメージも強い大張作画のパワフルな迫力は観る者を圧倒します。現在でもロボットアニメの変形合体や、武器・必殺技の決めポーズで、ぐぐっと手前に飛び出すようなデフォルメが効き、バキーン!と見得を切るような止めポーズになる類の「様式」を感じさせる作画が多いですが、それは「おおばり」という名字にちなむ「バリ系」の流れに属するものなのです。
80年代後半に到来した「OVAの時代」はテレビの枠をはみ出た濃い作品が多く、大張正己は『戦え!! イクサー1』『破邪大星ダンガイオー』『大魔獣激闘 鋼の鬼』など、エロやバイオレンスも見せ場となる作品でメカとエフェクト中心の作画監督として活躍。また『機甲戦記ドラグナー』のオープニングアニメが高く評価されたことで、『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-』などOPも数多く担当しています。
本編の監督を手がけるようになったのは『バブルガムクライシス』の5話からで、ここから作画と演出とが強くリンクしたダイナミックな大張作品が数多く生み出され始めます。
(C)AIC・EMIミュージック・ジャパン
原作・監督の『オーディアン』と『ダンガイザー3』は作家性が強いですが、一方で大張正己は『勇者エクスカイザー』から始まるサンライズの勇者シリーズ(34回目で触れました)の作画を手がけ、児童向けロボットアニメでも活躍していることに注目です。
特に第2作目の『太陽の勇者ファイバード』では、いわゆる変形・合体のDN(デュープネガの略で毎回流用される定型のシーン。
セル流用のBANKに対して撮影済みフィルム流用を意味する)を中心に、ここぞという重要場面のロボット作画を担当。特に最終回でヒーローロボットのマスクが破壊されて下から口が露出する場面は強烈なインパクトで、続く作品群にも「様式」として受け継がれるようになっていきます。
勇者シリーズと言えばメカデザインは大河原邦男ですが、そのコラボの延長にある大張監督の総決算的なロボットアニメが、ゴンゾ制作の『超重神グラヴィオン』です。キャラの立った群像劇に加え、ドリルもミサイルもビームも満載のメカ戦闘、壮大なストーリーとメイドさんや水着回があるなど振り幅の広い大張アニメの魅力が満載で、元気の出てくる爽快な作品です。未見の方はぜひそのパワフルな作画から放たれるオーラを浴びてみてください。
では、また次回(一部敬称略/定額以外のタイトルを一部含んでいます)。