アニメの歴史を変えた記念碑的な作品が、時代を超えてより多くの方に観ていただけるのは、非常に嬉しいです。
「シリーズ」と言っても、1988年の庵野秀明監督による第1作目『トップをねらえ!』、

2004年の鶴巻和哉監督による『トップをねらえ2!』と、OVAが各6話というのがオリジナルです。

そして『合体劇場版』として2006年に再編集+新作で公開されたバージョンがあります。

OVA版は合わせて12話分ですから、1クールアニメとあまり変わらないですね。年末年始の機会に一気に観ていただければと思います。1と2でテイストが違うので戸惑いを感じられるかもしれませんが、実は……という仕掛けもあるので、「一気」には意味があるかと。お時間のない方は1作目の6本までだと3時間と長めの映画と同じですし、さらに時間がなければ「合体劇場版」と、さまざまな楽しみ方ができるタイトルです。
筆者はその第1作のBD-BOX解説書を担当している関係で、まさに第1作目の映像や資料に触れている最中です。
今さらながらに驚くのが、作品のいたるところに充ちあふれたパワーの熱さですね。もちろん後に『新世紀エヴァンゲリオン』('95)など時代を変革するクリエイターたちの若き日々の作品であることも大きな理由ですが、そうしたネームバリューだけでなく、アニメが持っている根源的なエネルギーを感じます。
今年は大災害があり、各地が不幸に見舞われました。また、アニメや特撮を支えてきたクリエイターや関係者が去年に続き大勢亡くなっています。そんな部分だけ見れば、大きな逆境にあると言えます。
しかし、どんな逆境だとしても、各自があきらめずに自分を信じて、自分にしかできないことを行動し続ければ、奇跡を起こすことも可能だ……。そんな力強い確信が『トップをねらえ!』から伝わってきて、涙せざるを得ませんでした。


この作品で描かれている宇宙怪獣の襲来は、人類を絶滅寸前に追いこんでいきます。実は銀河系規模の宇宙的な意志で行われていると分かっても、それでもなお生き延びようと懸命に戦うちっぽけな地球の人類たち。もちろん反発の意志はアニメらしい華やかな宇宙艦隊戦やロボットバトルに置き換えられ、エンターテインメントとしての映像の快楽も存分に追求されてます。しかし、作り手たちがキャラと一体になって「本気」の確信を見せて、その場にいる気分で演出しているところがやはりすごい。
20数年が経過してなお魂を震わせてくれます。
第1話では体操着にしか見えない露出いっぱいの制服を着た少女たちが、パイロット養成学園でロボット操縦訓練の授業……という、オタク向けアニメの先駆者的なところから出発。『エースをねらえ!』のパロディ的な笑いを交えつつ、泣きべそ少女タカヤノリコの「努力と根性」のストーリーが始まるわけですが、それが第1作最終回では、彼女が銀河系規模の災厄を前に全人類を救うところまで行ってしまうわけです。
こうまとめてしまうと「奇跡」もお安く聞こえかねないわけですが、決してそうではありません。映像を観てるうちに物語に飲み込まれてしまい、「奇跡」を信じられるパワーが観客の心の中にそそぎ込まれていきます。ごく小さく折りたたまれた風呂敷が、話数を重ねるたびに次第に大きくなっていくような、サイズが拡がる感覚そのものが、快感なんですね。その拡大のきっかけも、人であれば誰もが覚えるごく自然な感情として示され、必ず誰かと誰かの感情の変化をベースに転機が訪れることも共感を呼びます。
出発点も転機も本当に等身大の気持ちで描かれてるだけに、悠久の時間と空間を超える奇跡でさえも信じられるようになってくる。その奇跡を起こすための「火」は、実は人間誰もの心にあるのだということが、再認識できる作品です。
ですから、まさにこれは今だからこそ観られるべき作品だと思います。
一人でも多くの方に、作品を通じて元気になっていただきたいですね。
では、また次回(一部敬称略)。
(C)BANDAI VISUAL・FlyingDog・GAINAX
(C)2003 GAINAX/TOP2委員会
(C)BANDAI VISUAL・JVC Entertainment・GAINAX(C)2003 GAINAX/TOP2委員会
※『トップをねらえ!』シリーズ全話無料配信は2011/12/31 23:59までの期間限定キャンペーンです。