筆者もアニメーション部門の審査委員を担当、今年もなかなかすごい作品が受賞しました。詳細は公式サイト(http://j-mediaarts.jp/)を見ていただくとして、
ここでぜひ強調したいのはメカニカルデザイナーの大河原邦男さんが功労賞を受賞したことです。
大河原さんは言うまでもなく『機動戦士ガンダム』のメカデザイナーとして有名ですが、1972年に『科学忍者隊ガッチャマン』のメカ鉄獣で、アニメ用の空想メカとしては初の専業メカデザイナーとしてデビューした方です。同作では当初、美術監督の中村光毅さんがメカデザインを兼務していましたし、他の作品でもメカはあくまでも動かすキャラクターとして作画監督(キャラクターデザイナー)がデザインするなど「専業」という形ではなかったのです。
もともと賞は監督などの「作家」や「作品」に与えられることが多いのですが、功労賞はそうした範疇以外で、業界に多大な貢献をされた方として規定されています。まさにメカデザイナーという前人未踏の職種を開拓し、40年間も継続的に活躍され、ガンダムとザクという誰でも知っている巨大ロボット(モビルスーツ)をデザインされた大河原さんにこそふさわしい賞と言えるでしょう。
2月24日(日)15:00〜17:05には大河原邦男さんをお迎えしての上映会も予定されています(http://j-mediaarts.jp/events/screening?locale=ja)。
ここではバンダイチャンネルで視聴可能な大河原メカ作品をいくつかピックアップして紹介することで、受賞を祝いたいと思います。
●無敵鋼人ダイターン3(見放題)
2月24日(日)15:00〜17:05には大河原邦男さんをお迎えしての上映会も予定されています(http://j-mediaarts.jp/events/screening?locale=ja)。
ここではバンダイチャンネルで視聴可能な大河原メカ作品をいくつかピックアップして紹介することで、受賞を祝いたいと思います。
大河原邦男さんがサンライズで初めてメインメカを手がけた作品。戦車、戦闘機、ロボットと3タイプに変形するダイターン3のデザインは、大河原さんが木を削りだしたモデルでプレゼンテーションしたそうです。多彩な武器とアクションも楽しい作品ですが、大河原メカとしてはパトカーが戦闘機に変形するマッハアタッカー、宇宙機として理にかなった美しいフォルムのマサアロケットも魅力的。メンテナンス用の「メカマル」のひとつがハロに発展したなど、次の作品『機動戦士ガンダム』ともゆかりの深い作品です。
『ガンダム』最終回に続いて放送されたのは、主人公が社長で小学生という変わったロボットアニメの本作。7種のメカに変形するトライダーは、まさに大河原ロボットの王道と言えるでしょう。中小企業が巨大ロボットを運営しているという世界観もすごいですが、公園の遊具が割れて発進していく一連のシーンは燃えます。
先日、大河原邦男さんの地元・稲城市で開催された「メカデザイナーズサミット」でも明言がありましたが、玩具主導でロボットが開発されていた時代は、作品の世界観と必ずしもマッチしないことがありました。ザブングルもその典型だったそうですが、しかし2機の同型を出すなど、作中で独特のポジションを与えたのは、まさに富野由悠季監督の手腕によるもの。当時は1年間の放送だったので、3クール目からは世界観をつかんだ上での大河原メカ「ウォーカーギャリア」という「2号ロボ」が登場します。この伝統は、以後続くダンバイン、エルガイム、Zガンダムにも引き継がれていますね。
これも同イベントで言及がありましたが、事情があって大河原さんはメインメカのみを担当。残りのプロマキス他の機甲兵にも大河原さんのラフが存在していましたが、これをベースにリファインして甲冑ファンタジー的な世界観を作りあげたのは『ザブングル』同等、出渕裕さんでした。このビジュアル的な対比がドラマ的には面白いスパイスになっています。