第19回 『鋼鉄神ジーグ』時空を越えたダイナミックパワー

[  カテゴリ  氷川竜介のチャンネル探訪  ] 2010年12月16日 23:50
バンダイチャンネルの企画『ANIME FES VS』で『鋼鉄神ジーグ』がフィーチャーされていると聞いて、なんだかとても嬉しくなってしまいました。DVD、BDパッケージの解説書でお手伝いさせていただいたロボットアニメですが、作り手の真剣な想いと熱気がこもったパワフルな力作。
ちょっとバカでスケベだけど行動力バツグンの主人公・剣児がバイクの雷鋼馬に乗り、鋼鉄神ジーグへとビルドアップし、邪魔大王国が送りこむハニワ幻人と戦う。この王道の展開を豪快なアクションで見せきっていて、ダイナミックプロ作品が好きな方なら
絶対に気に入ると思います。
  
(C)永井豪/ダイナミック企画・ビルドベース
監督は川越淳。最新作『マジンカイザーSKL』も担当されていますが、これまでも『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日』(第4話以後)、『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ』、『新ゲッターロボ』など永井豪とダイナミックプロ作品を現在の感覚でアニメ化する作品の監督を多く手がけています。
その中でも特に『鋼鉄神ジーグ』が面白いなと思うのは、ロボット戦闘などの魅力もさることながら、70年代に発表された前作の『鋼鉄ジーグ』から50年が経過した「続編」という珍しい設定をとっていることです。

かつて半世紀前、初代ジーグと邪魔大王国の激戦が九州地方に展開。そのとき発生した特殊なゾーン内では時間が停止していたため、女王・妃魅禍(ヒミカ)やジーグと司馬宙など当時そのままのキャラがいます。
一方で司馬遷次郎博士や美和など年老いたキャラもいて、時が引き裂いた劇的な運命も描かれます。ここに若々しく熱血の現代キャラである草薙剣児と珠城つばきが絡んできて、さらには物語の秘密の鍵となる美角鏡がいる。このように多様な視点で絡みあう複雑なドラマが用意されていて、ロボットバトルの爽快感にプラスされている点が最大の魅力でしょう。

(C)永井豪/ダイナミック企画・ビルドベース
前作をリスペクトするだけでなく、今との関係性を大事にしている姿勢は、「銅鐸」という物語のシンボルに集約されています。同じことはメカ設定にも言えます。ジーグのロボットとしての特徴は球体関節によってジーグバズーカ、マリンパーツなど手足の部品を自在に換装し、臨機応変の戦いをすることにあります。

 
(C)永井豪/ダイナミック企画・ビルドベース
新しいジーグも当然それを踏襲していますが、ジョイント部分に互換性があるため、初代のパーツを装備して戦うことができるんですね。ちょっとした工夫ですが、この継承性があるからこそクライマックスのダブルジーグの戦いにも心おきなく
燃えられるというわけです。
巨大ロボットと怪獣系の敵が激突するバトルシーンの殺陣(たて)だけでも存分に楽しめますが、新旧の関係性をきちんと位置づけている姿勢には好感がもてます。実際に現実世界でも30数年が経過しているわけです。設定としての「続編」というだけでなく、しっかりと流れた時間とその意味をとらえ、それをネガティブなものとはせずに「あるがまま」にきちんとドラマに応用したことには、非常に大きな感銘をうけました。ぜひ多くの方にご覧いただきたい快作です。
ちなみに歴代ダイナミックプロのキャラが随所に登場していることもファンサービスのひとつです。『ガクエン退屈男』のキャラを女性化したパイロットも登場したりして、けっこう驚きました。

(C)永井豪/ダイナミック企画・ビルドベース
「かつてのキャラが女性化して再登場」って、最近の流行ですよね。ではまた次回(敬称略)。