20年以上も続いているSFアニメシリーズはいくつかありますが、いずれも単なる続編にはするまいと、それぞれ趣向をこらしているのが文化的にも面白いところです。その中でもマクロスシリーズは一風変わったスタンスをとっています。
1982年に放送された『超時空要塞マクロス』を起点として、設定的にも時間的にも連続してはいるのですが、微妙な「ゆらぎ」をそなえています。
それは河森正治総監督が、各作品を「実際に起きた事件をフィクションとして描き直したもの」と位置づけているからなのです。
最初のシリーズがTVと劇場版で設定や物語展開に微妙な差異があるのもそのためですし、最新作の『マクロスF(フロンティア)』も劇場アニメ化に際して同じような異同があります。
TV版『マクロスF』は25年以上に及ぶ「歌と三角関係と可変戦闘機」というマクロスシリーズの伝統を引き継ぎ、
さらにこれまで積み重ねてきた諸要素を肯定的にとらえた上で、具材として大盛りに積み上げて提示した作品です。
さらに「シェリル・ノーム&ランカ・リー」のダブル歌姫、宇宙怪獣との戦いなどの新規で旺盛なサービス精神は新しいファンを獲得し、現実世界では武道館コンサートを達成するなど記録的な大ヒット作となりました。

(C)2007 ビックウエスト/マクロスF製作委員会・MBS
注目すべきは「シリーズの要素」という「以前にやったもの」を使いつつ、さらに「未知なる最先端」を開拓しようというチャレンジ精神です。フロンティアとは本来は「漠然とした未開の地」というよりは「到達可能なまでギリギリやった最前線」という意味ですから、まさにタイトルどおりの「最前線アニメ」なのです。それはTVシリーズにして過剰なまでの物量による高速CG戦闘シーンひとつ見てもよく分かります。
そうなるとTVを発展させた劇場版は、さらに先を目指すことになりますから、いったいどうするのかと興味津々でした。
結果はTVシリーズの初期話数をベースに受けいれられた魅力を継承しつつ、初見の観客に「こういう作品だ」ということを伝えながらも、いたるところにパワーアップをほどこすことで、劇場版ならではの独特の魅力を宿すことに成功していると思います。
特にライヴシーンには大量の新作を加え、華麗にショーアップして見応えがあります。シェリルの1曲目から歯車をモチーフにした舞台演出を導入して「銀河の妖精」という確立したスターのステータスを強調。
一方でアイドルの階段をのぼり始めるランカ・リーは、初々しさを出すためにも手売りの「営業シーン」を改訂し、納豆やバルキリーにまで変身してみせる超サービスを連発します。もちろん早乙女アルトとの関係も、それぞれ深めつつ……。
この2人のヒロインがクライマックスでどのように絡みあい、激しい戦闘の中で歌唱を盛りあげていくのか。そこが「イツワリノウタヒメ」として最大の見せ場になっています。これは前後編の前編のはずなのですが、その構造だけはTVシリーズ全体を圧縮したようにもなっていて、1本の映画としてはそれなりに終わっても見えるのが爽快感をもたらします。
それだけに、はたして2月公開の後編「恋離飛翼 サヨナラノツバサ」はどうやってさらにパワーアップさせるのか、非常に楽しみになってきています。
一度開拓が済んでしまったように見えるものも、作り手の意欲次第で新たなフロンティアになり得るということは、閉塞感のある時代に貴重なサンプルでもありますね。ではまた次回(敬称略)。

