実写映画3作目の『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』が、7月末から公開中です。
3D立体視を初めて採用の超大作、『アルマゲドン』や『パールハーバー』など、火薬使いまくりの派手な映像でおなじみ
マイケル・ベイ監督ということで、大きな話題を呼んでます。
ハリウッド娯楽大作の代表と受け止められていますが、そもそも『トランスフォーマー』は日本製の玩具が発展したもので、それ以前にロボットアニメ自体が日本発祥なのですから、それがここまで大きな存在になったという感慨もあります。
そしてこれは、1990年代を代表するロボットアニメ「勇者シリーズ」とも深いつながりがあります。
今回はその辺を話題にしてみましょう。
『トランスフォーマー』に登場する変形ロボットたちは、元はタカラ(現:タカラトミー)が「ダイアクロン」「ミクロマン」など玩具展開として発売していたものでした。これをハズブロ社がアメリカへ持ち込み、いくつか他社のロボット玩具もあわせることで、「TRANSFORMERS」と命名したのです。本来は「S」がついて複数形になっているので、「トランスフォーマー族」みたいなニュアンスもあります。「TRANSFORMER」とは電気の「変圧器」のことですが、形(FORM)を変化(TRANS)させるという語源どおりの意味に転じてるとこがうまいです。
これを日本の東映アニメーションが中心になってアニメ化した作品が1984年に製作、日本には1985年に逆輸入されたTVシリーズ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』というわけです。
このとき重要なのは、アメリカナイズする一貫として「ロボット生命体」という設定をつくったことです。もともとコンボイ司令を筆頭に、地球の乗り物がロボットに変形するものが中心ですから、伝統の巨大ロボのように人間が乗るという設定でも良かったはずですが、自意識をもたせて口が動いて言葉を話す「ロボットキャラ」にしたことが、今の発展につながってると思います。
80年代中盤とは、ちょうど日本のロボットアニメがリアルロボット全盛期から、次第に下り坂に向かう時期でもありました。その要因はよくOVAに求められるのですが、実は「合作ブーム」があって海外向けに制作スタッフやビジネスのリソースが割かれていたという事情も大きいんですね。
「トランスフォーマーシリーズ」は日本でもヒットし、独自のTVアニメも作られることになります。
一方で、いったんはハイターゲットをきわめた後に終焉に向かったロボットアニメを、児童向けにリセットして再開したいという機運も生じてきます。90年代序盤のアニメにはリスタート気分が漂った作品が多いのですが、皮切りとして登場したのが1990年2月放送開始のTVアニメ『勇者エクスカイザー』でした。
このヒットが、1998年の『勇者王ガオガイガー』まで全8作が作られる「勇者シリーズ」へと発展していきます。そしてスポンサーは「トランスフォーマーシリーズ」と同じタカラ、主な商材は自動車や新幹線など「乗り物」が変形・合体するロボットだったというわけです。
『エクスカイザー』の特徴は主人公が子どもであることですが、それ以上にエポックメイキングだったのは、主人公が「主役メカ」に乗らないことです。エクスカイザーは「宇宙警察カイザーズのリーダー」と設定されています。要するに人格をもった宇宙人です。そして次々とやってきたカイザーズの仲間は、地球の乗り物と融合して見た目は変形ロボットとして活躍し、主人公と友だちになっていきます。
ここに「子どもとロボットが友だち関係」という新しいジャンルが誕生したわけです。それは「トランスフォーマーシリーズ」から大き受け継がれた要素を、さらに発展させたものだったということなんですね。
次の1991年には、この成功をバネにサンライズがさらなる子ども向けロボットアニメの展開を提示し、新たな黄金期を迎えます。勇者シリーズ第2弾『太陽の勇者ファイバード』では、主人公の兄貴分に相当するファイバードの人間体が登場し、「友情」という要素をさらに深めます。また同年には、トミーをスポンサーにして『絶対無敵ライジンオー』が始まり、ここで小学五年生が教室から発進したロボに乗り込むという夢のシーンが実現します。「勇者シリーズ」とは相互補完するかのような関係で、小学生の夢をかなえていたというわけですね。
このように、ロボットアニメの歴史を考える上でも、「トランスフォーマーシリーズ」の存在はカナメとなっているわけです。そんなことを念頭において新作実写映画を楽しみつつ、勇者シリーズを再見して「アニメでなければできないこと」を楽しむのも一興ではないでしょうか。では、また次回(敬称略)。
第34回 映画『トランスフォーマー』と勇者シリーズ
[ カテゴリ 氷川竜介のチャンネル探訪 ]
2011年07月29日 11:59
| この記事のURL : https://info.b-ch.com/article/293109062.html
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